NLP 講座の応用編
既婚者である高額自費診療専門皮膚科ドクターが、デート中に自分のダンナに会ってみないか、と提案してきたところまでお話しした。
「しかし、彼は何故ボクと会いたいと言い出したのだろう」「医者って世間知らずが多いでしょう?フエルちゃんの話を聞いて、少しは社会勉強でもしょうということではないかしら」「社会勉強ねぇ・・・」「株の話とか、クルマの話とか、ワインの話とか、そういうのフエルちゃん得意でしょう」「カネとクルマと酒の話か。
なんだか俗っぽいな」「俗っぽいところがあなたのウリなのよ」一手確まあ良いだろう。
相当悪趣味な話だが、コキュの間抜けた面を眺めてやるのも一興だ。
かくして我々は、翌々週の金曜日に3人で会うことに決めたのである。
問題の金曜日。
私は一番地味で目立たないスーツを選び、シャツも生命保険のセールスマンのような無難なものを着た。
ネクタイだけは、彼女が誕生日に贈ってくれた洗練されたものを締めた。
彼女はこれを見てどんな表情をするだろうか。
ちょっとした悪戯心だ。
私は待ち合わせ時間より10分早く、指定された店に着いた。
しかし彼は既に到着しており、ゆったりマティーニなんぞを飲んでいる。
「いつも家内がお世話になっております」彼は立ち上がってにこやかに挨拶をすると、私に席を勧めた。
「先ほど家内から電話がありまして、申し訳ないが30分ほど遅れるとのことです。
私たちだけで先に始めていましょう」彼は浅黒く背が高く彫りの深い顔をしている。
男性誌のモデルと言っても通用しそうな印象だ。
「家内が話していたイメージ通りの方です。
ずいぶん鍛えてらっしやるようですね、Yさん」「いえ、それほどでもないです」「羨ましいですよ。
私はいくら食べても太らないタチで、体もこのとおりガリガリです」決してガリガリではない。
無駄な肉を削ぎ落とした絞られた体であることは、服の上からもわかる。
彼は私のことを予想通りと言ったが、私の(希望的)予想は大きく外れた。
私は色白で小太りで額と掌にいつも汗をかいているような、ガリ勉タイプの自豚野郎を予想していたのである。
「少し自己紹介をさせて下さい」彼は自分のことを話し始めた。
ジュニアの時代からテニスを始め、相当なクラスで戦っていたこと。
大学の法学部に入学したものの、法律に興味が持てず2年生から医学部を受験し直したこと(彼女とは同級生だが、2つ年上ということになる)。
学生時代からポルシェを乗り継ぎ、今の997は4台目であること。
彼女とは医学部で知り合い、卒業して間もなく結婚したこと。
医局では早い時期からスタッフになっていたこと。
父親は港区で開業する内科医であること。
金持ちでスポーツマンで頭脳明断で、しかも面の印刷まで良い、典型的な勝ち組サイドの人間であることはよくわかった。
「さて、家内が来る前にお話ししておかなければならないことがあります」「なんでしょう?」「Yさん。
あなたは、私が何も知らないと思っていらっしゃるでしょう」「は?」「女房を寝取られた、間抜けな亭主だと思っている。
違いますか?」「あ、あの」「私はすべてわかっています。
家内があなたと一緒に、どこかの駅で急患を手当てしたことも、ね」これはえらいことになった。
探偵でも雇い彼女の素行調査をしたのだろうか。
先日、広告代理店の友人に「お前はガードが甘すぎる」と指摘されたことが現実になってしまった。
投資が順調に進んでいても、予測できない外的要因により交際の継続が難しくなることがある。
こうした不測の事態を、恋愛投資業界では「イベントリスク」と呼ぶ。
彼バレ、旦那バレ、社内不倫バレなどが典型的なケースである。
また、デート中の交通事故などもイベントリスクと呼ぶことが出来る(実際、デート中に事故を起こして彼女に怪我をさせてしまい、関係が破綻した友人が居る)。
破綻か?訴訟か?乱闘か?どうする?アイフル。
いや、フエルディナント。
以下次回!【アクティビスト】activist本来は♀動家″全般を意味する言葉だが、投資の世界では、配当引き上げや経営戦略の変更要求など、企業価値向上のために活動する株主のことを指す。
£Z期的に株価を上げて、短期的に売り抜け、利益のみ持っていく″と企業の経営者からは非難がましく言われることが多い。
村上世彰被告がまさにその代表選手だ。
最重要投資先である、高額自費診療専門皮膚科ドクターのダンナと二人きりの、ビミョーな時間が続いている。
そもそも彼は、我々の関係をどの程度知っているのだろう。
彼が大阪での学会に出かけた際、コンラッドで外泊したこと。
ボードウォークだけは素敵な天王洲を、酔って二人で歌いながら散歩したこと。
今日のネクタイは彼女のプレゼントであること。
そして彼女が肌身離さず着けているネックレスは、私のプレゼントであること。
彼は実験動物を観察する科学者のような目付きで私を眺めている。
その日からは、怒りも、悲しみも、嫉妬すらも感じれらない。
「Yさん、私はあなたが家内と寝ていることも知っている」「いえ、その・・・ボク・・・私は」舌が捧れて呂律が回らない。
ぐうの音も出ない、とはこのことだ。
「そのネクタイもお似合いです」ネクタイのことまで知っているのか。
もうトボけても意味がない。
「少し質問させてください」「どうぞ。
しかしYさん。
私の答えはあなたを相当驚かすことになると思います」上等だ。
こうなったら何を言われても驚くものか。
「彼女は、あなたが知っていることを知っているのですか。
へンな日本語ですが」「まったく知らないでしょうね。
むしろ知られては困る」「どういうことでしょう」彼はワインを一気に流し込むと、私の目を見据えて言った。
「家内に特殊な治癒能力があることはお気付きですね。
ところが私と一緒になってから、その能力が衰えてきた。
それはもう急激に」「なるほど。
しかしどうして」「分かりません。
ところがあなたと会うようになってから、その能力が徐々に回復してきたのです」「ははあ」「あなたと寝るようになってからは、治癒能力が格段に高くなった。
つまり、あなたが彼女の能力を引き出したということです」「そんな、単なる偶然でしょう」「お連れ様がお見えです」ここでようやく彼女が到着した。
黒いドレスが美しい。
「ごめんなさい。
最後の患者さんが手間取っちゃって」彼女は有名な女優のシミ取りをしていたのだと言う。
「どうしたの。
怖い顔して呪み合っちゃって」彼女はネックレスを指で弄びながら、悪戯っぽく笑っている。
「さっきから意見が対立していてね。
どうも話が噛み合わない」一体何を言い出すつもりだ。
「Yさんは、日本が三連敗すると仰る。
ボクは一回は引き分けると思う」「やだ、サッカーの話?それならYさん、彼と競ってもムダだわ。
彼、スポーツの予想だけは、百発百中なの」「そう。
スポーツだけは、ね」「去年はイチローの打率まで当てたのよ。
厘の桁まで」ウエイターがやって来て、彼女に耳打ちした。
「大変!クルマのライトが点けっ放しですって」彼女は慌てて席を立って行った。
「Yさん。
私にはへンな能力がありまして、興味がある人間の少し先の将来や、強い記憶が見えてしまう」「まさか・・・ちょ、超能力・・・」そんなことが本当にあるのか。
「そう言ってもいいかもしれない。
ともかく彼女があなたに会った日はすぐ分かる。
先週の木曜日は四谷で食事をして、そのまま・・・」ブラフではない。
余りに突飛な話で信じられない(信じたくない)が、それらは真実だ。
「NLP 講座は課題も多いが、NLP 講座は関係の改善と前進に向けた大きな可能性を持つ」と述べた。
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